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薬害について私の見解

エステティシャンでもあった私は、お客さまである女性たちから肌の悩みだけでなく、さまざまな相談を承ってきた。
お客さま方は、エステティシャンに全幅の信頼をおき、大切な肌の管理ばかりではなく、心の悩みまでも打ち明けてくださる。したがって、お客さまとエステティシャンの間にはかなり濃密な信頼関係が生まれる。
家庭や職場での悩み、健康上の悩みなど、他人にはなかなか話せない事柄を簡単に打ち明けられるエステティシャンは、お客さまの秘密を共有するもっとも近い人物の一人といえるかも知れない。

「病を治すのは神と患者本人であり、医師はその手伝いをするだけ」といったのは、シュヴァイツアー博士である。
この言葉を借りると、『健康な肌を維持するのは女性自身であり、エステティシャンはそのお手伝いをするだけ』ということになる。しかし、世の女性たちは応々にして、美肌を維持するつもりでとんでもない間違いを冒してしまう。たとえば、肌荒れ解消のために、簡単に薬品を用いる。
前にも書いたが、この世に存在する全ての薬物は、『毒をもって毒を制する』という思想のもとに作られている。ニキビや吹き出物治療の目的で処方される塗り薬や飲み薬も同様であり、そのために医師は必ず「用法、容量の厳守」などをいい渡す。
しかし、少しでも早くキレイになりたいと思う女心は、この忠告を無視して多量に服用する。世間にはそういう女性が割合いに多い。肝障害から死亡者まで出てしまった中国製のダイエット食品が、未だに個人輸入の形で売買されているのもそのせいである。
通常化粧品は、皮膚を通して直接身体の深奥まで浸透することはないが、薬物はその限りではない。たとえ塗り薬であっても皮膚から浸透し、配合成分の一部は血液中に溶け込み、血流に乗って身体の隅々にまで運ばれる。そのうえ、体外に排泄されず、体内に残留する場合がある。体内に留まったこれらの残留成分は、時として深刻な副作用をもたらす。
以下のケースは、エステティシャンとしての私が過去に遭遇した方たちの悲惨な例である。
【ケース1】
当事、私が経営していたエステティックサロンは、お客さまの施術内容に見合った時間をご予約いただき、完全個室で対応させていただいていた。お客さまはご来店くださると、それぞれ個室に入られてエステティックを受けられるための着替えを済ませてエステティシャンをお待ちになる。
ところが、バストのサイズアップを希望してご来店になったA子さんは、グズグズと着替えをされない。そして、そのまま一時間半がすぎ、お帰りになってしまわれた。
私とスタッフは理由がわからず、まるでキッネにつままれたような気分に陥った。
その一週間後、再度ご来店されたA子さんは、やはり前回と同様に施術ルームで無意味に時間を過ごして帰られた。
さらにその一ヵ月後、再々度ご来店されたA子さんは、スタッフに強く促されて施術着のガウンに着替えはされたものの、バストアップをお望みであったにもかかわらず、ガウンの胸元を強くかきあわせて、肝心のバストをスタッフに触れさせるどころか、見せようとさえしなかった。スタッフの報告を受けた私が、「たとえ施術を受けられなくても、本日はキャンセル料として正規の料金を申し受けます。今後のご予約は一切ご遠慮ください」と強く申し入れた。
するとA子さんはすねたようにプイと横を向いたかと思うと、次に黒い大きな瞳で私を強くにらみつけたが、その瞳はたちまち涙をたたえた。私はビックリして言葉を失った。
A子さんは私に涙を見せまいとしてか、今度は顔をうつむけると、つま先で『のの字』を書くような仕種をしながら「ハー」と小さなため息をもらした。そして私に対して何かを訴えかけるような眼差しを投げかけた。
私はA子さんの目まぐるしいばかりな複雑な反応に大いに困惑したが、その様子から、何か事情がおありではないかと察して、その事情を根気よくお訊ねした。
やがてA子さんは無言でガウンの前をはだけると、そのままそっぽを向かれた。そのガウンを開いて見た私は、思わず息を呑んだ。
A子さんのへん平な胸の中心部と乳房の周りに、まるで黒い釣り糸を植えつけたような剛毛が生えていたのである。入浴のたびに剃り続けているという毛は、触れるとチクチクした。そのうえ、乳輪のまわりには男性の濃いヒゲのような毛までが密生していた。私はようやくA子さんの不可解な行動の意味を理解するとともに、A子さんの悩みはいかばかりであったろうかと深い同情を禁じ得なかった。これらの毛はエステティックの脱毛法で取り除いたので、今のA子さんに胸毛は生えていない。
私はA子さんの心情をおもんぱかり、スタッフにあたらせることなく自らA子さんのバストアップとともにエステティック脱毛を施したのである。
しかし、A子さんはどうして胸毛が生えたのだろうか?
A子さんは、中学生の頃、肌荒れ治療のために皮膚科に通ったのがきっかけとなって、その当時からホルモン剤の入った塗り薬を愛用していたのだという。
私は、このA子さんとの出会いによって、それまで無関心であった薬害の存在を知ることになった。

【ケース2】
太く濃いまゆ毛と、軽くカールした長いまつげが印象的なB子さんは、フェイシャルケア(美顔・美肌ケア)を目的に月に一度の割合でサロンにお越しになっていた。
B子さんは、恋人との別れがきっかけで私のサロンに通われるようになったという。
ひどい生理痛と無排卵性生理に悩むB子さんは、女性自身を覆う恥毛が、腹部から胸のあたりまでつながっていた。
B子さんは、数年前から生理日を調整する目的で、たびたび排卵抑止剤を常用していたという。しかも、男性のように腹部まで恥毛が拡がったのは、どうやら排卵抑止剤を服用し始めてからであるらしい。まるでハリウッドの女優さんのように美しく彫の深い顔立ちのB子さんは、恋人に胸まで広がった恥毛のことを、「男のようだ」といわれたのがきっかけで離別したという。

【ケース3】
女性なのに濃いあごヒゲに悩んでいたC子さんは、口の周りだけではなく、A子さんのように乳輪の周囲にも男性のヒゲのような毛が密生していた。C子さんは美容に貪欲な方で、化粧品に比べて美肌効果が高いといわれる皮膚専用の塗り薬を長期間にわたって愛用していた。また、C子さんの生理はきわめて不順で、本来なら毎月あるべき生理が、年に数回しかないという。

【ケース4】
母と姉、妹、従妹らの肉親は、みんな豊満なバストであるのに、一人だけへん平なバストに悩んでいたD子さんは、生理痛がひどく、あまりの痛さに毎回失神しそうになるといい、現に電車の中で失神してしまった経験もあるという。
幼いころにひどい腹痛を医師に治してもらったのがきっかけで、それ以来薬大好き人間になってしまったというD子さんは、いわゆる健康食品マニアでもある。
私は、バストのサイズアップを強く望むD子さんに、健康食品を含む一切の薬物の使用を止めてもらい、一日に二リットル以上の水分を摂取していただくようお願いした。
一年後、D子さんのバストは豊満とはいえないまでも、貧弱な状態ではなくなった。
女性のバストは年ごろになると豊かになる仕組みになっているので、障害となる原因が取り除かれれば、豊かになれるのである。ただし、年齢制限があるのはいうまでもない。

【ケース5】
E子さんは、脇毛の脱毛が目的でサロンに通っていた方である。
そのE子さんには、中耳炎などを患った際に発生する悪臭に似た、異様な体臭があった。体臭は日によって強弱がある。
E子さんが使用した後のエステティックルームは翌日まで悪臭が残り、他のお客さまが使用できない状態だった。ご本人には申し訳ないが、ご予約をいただくと、全スタッフがくじ引きで担当を決めていたほど、それは耐え難い臭いだった。
E子さんの体臭の原因は、常用していた美肌用の塗り薬の残留成分が、体内で変化して発するものであった。抜けるような白い肌を維持するために、E子さんは塗り薬を常用していたのである。
私が体臭とその原因と思われるものを指摘すると、驚いたことにご本人は「自分に体臭があるとは気づいていなかった」といい、ひどく困惑した様子だった。
それでも思い当たるふしがあったらしく、E子さんは私のアドバイスを受け入れ、間もなく薬を絶ったが、長年常用していた塗り薬の使用を止めた後の『禁断症状』は想像を絶するものだった。顔全体がむくんで、ジクジクと膿が流れ出し、数ヵ月もの間外出できなかったのである。
薬剤使用にあたって医師の忠告を無視した結果であり、責任は本人に帰するものであるが、そういい切ってしまうにはあまりにも残酷な数ヵ月間であった。副作用の怖さに無頓着な結果がもたらしたものだといっても過言ではないだろう。
ちなみにE子さんと同様のケースで、禁断症状を克服された方は、私の知る限りE子さんの他にはいない。美肌用の塗り薬などの使用を止めることによって起こる禁断症状は、女性たちにとって深刻で、筆舌に尽くし難いほど過酷なものなのである。

ついでにいえば、現在弊社で発毛・育毛促進の一助として施術しているルチア育毛デトックス法は、E子さんのように顔面下に医薬品などの残留成分を蓄積させてしまった方に対し、それらの残留成分(不純物)をE子さんのような苦痛を味わうことなく除去させたいという願いから、最初は私が自身の顔と身体を実験台にしながら、模索を繰り返した末に確立したクレンジング法である。
私はA子さんと出会って薬害の存在を知り、E子さんとの出会いがきっかけでルチア育毛デトックス法を考案させていただいたのである。

A子さん、B子さん、C子さん、D子さん、E子さんと、それぞれ五人の女性の事例をあげたけれども、私は五人とも、薬の使用や服用が引き金になって、体内のホルモンバランスが狂わされた結果もたらされた、一種の薬害だと確信に近い思いがある。
この方たちの他にいくつもの事例を見てきたが、女性たちの身にあらわれるこうした薬害の症状は、実に多用で悲惨なものだということを認識していただければと思う。
さらにここで強調したいのは、薬害は必ず脱毛症の引き金になるということである。私は脱毛症に悩む方々に、声を大にして伝えたい。不幸にして病に侵されたのでなければ、健康食品や薬剤の使用に頼ることを止めていただきたいと思う。
飽食の時代といわれる現代日本では、大部分の方が栄養過多による肥満対策としてなんらかの形でダイエットに励んでおられる。この現象と、日本が世界一の長寿国である事実を考えあわせると、ことさら健康食品に頼る必要性などないばかりか、継続摂取するとかえって健康を損ねてしまう可能性もある。この点をぜひ考慮していただきたいと切に願うものである。

<お断り>
今もってエステティックのお申し込みがありますが、私は今から八年前の冬、赤信号で停車中に追突されたのが原因で、深刻な言語障害とともに左半身が不自由になり、天職と信じていたエステティシャンを断念しなければならなくなりました。今でもこれらの症状は完治されず、私は人知れず後遺症に悩まされ続けています。この事故は当て逃げ同然の事故で、私は加害者から治療費の支払いさえ受けていません。相手の一方的な過失で起きた事故によって私は健康を損ねたばかりでなく、天職とまで信じていたエステティシャンの職を断念しなければならなくなってしまったのです。以上のような理由で、エステティックのお申し込みはすべてお断りしております。

あとがき

髪が薄くなりはじめたときの悩みや心の葛藤は、当事者でないとわかりません。
弊社には毎日、髪にお悩みの方たちから、たくさんのご相談が寄せられますが、みなさんからいただくご相談の内容は深刻で、ほとんどが髪と頭皮に関する正確な知識を持たなかったゆえの悩みでした。
最近では薬害を始め、高周波施術、育毛剤の強制浸透、健康食品等の過剰摂取、頭皮に果汁や薬草などを塗布するなど、見当違いなケアを行ったために、かえって回復困難な脱毛症になってしまった方たちからの相談が増えております。
しかし私たちの身体に必要があって備わっている髪の毛は、間違った手入れなどを施さなければ決してなくなるものではありません。髪の毛はあって当たり前なのですから、脱毛症を発症させてしまった方でも、皮下組織が健康であれば発毛・育毛は簡単に達成されます。
どうか必要以上に髪の毛に神経をお使いになりませんよう、お願い申し上げます。
本書が髪に悩むすべての方のお役に立てればと願って止みません。

二〇〇三年二月
東田雪子