トップ ルチアの育毛 第8章 噂の真相

第8章 噂の真相

『飲む育毛剤』は効果がある?

最近『飲む育毛剤』についての問い合わせを多くいただく。
髪にしろ、健康問題にしろ、悩みを持つ方たちは、「よい」といわれる新製品にはワラにもすがる思いで飛びつく。
育毛剤についていえば、『症状に合わせて薬剤師が調合した漢方薬入り』商品とか、大手育毛剤メーカーが推奨する『男性ホルモンの分泌を抑える成分入り』とか『育毛研究で有名な医師が開発し、発毛・育毛効果の高い成分で作られた』などのうたい文句に彩られた商品に殺到する。
しかし服用すれば、発毛・育毛が促進されるという成分は、医学的には明確でないし、配合成分によっては、思いがけない副作用があらわれる恐れがあることを念頭におくべきである。
そこで、もっとも問い合わせの多い『男性ホルモンの分泌を抑える効果のある成分が含まれた飲む育毛剤』について考察してみることにする。
飲む育毛剤について相談者の言葉を総合すると、次のようになる。
「髪の毛がなくなっても特に困るわけではないが、やっぱりないよりはあった方がいいに決まっている。それに髪の毛がないせいか、このごろは女性に声をかける勇気までなくなってしまった。近ごろは女性ホルモンが入った育毛剤や、ハゲの原因である男性ホルモンの分泌を抑える飲み薬の噂を聞くので、ぜひ試したい。しかし男性ホルモンが分泌されなくなったりすると、女性を愛せなくなるのではないかと、それだけが心配だ。女性にモテたいから髪の毛が欲しいのに、いざというときに男として役に立たないのなら、髪の毛が生えても意味がない。そこのところをハッキリ教えて欲しい」などというものである。
どうやら成人男性の中にはシャイな方が多いようで、これらの相談はすべて電話によるものである。

『男性ホルモンの分泌を抑える効果のある成分が含まれた、飲む育毛剤』が、発毛・育毛に効果があるとされるのは、『男性ホルモンが多いとハゲになる』という根拠のない俗説に基づいている。
しかも、男性ホルモンが多いとハゲになるというのは、嘘まやかしである。
なぜかといえば、男性ホルモンの分泌がもっとも盛んな十代後半から二十代の男性の髪が豊かであることが実証している。そればかりか、二十代の男性たちは、男性ホルモンの塊といっても過言ではない。
脱毛症の主因であると誤解されている男性ホルモンであるが、実際はその反対で、皮脂腺や毛嚢の発育を刺激し、発毛を促す働きもしているのである。
男性ホルモンは、別名睾丸ホルモンとも呼ばれ、思春期にいたった男性の睾丸から分泌される大切なホルモンで、このホルモンが分泌されることによって、男性は「男の子」から「男」にかわる。
したがって、男性ホルモンが分泌されなくなると、男性は男としての機能を失ってしまうのである。
「髪が生えても、男性機能がなくなってしまっては意味がない」という相談者の不安はもっともであるが、不安を先走らせて、わざわざそんな危険を冒してまで服用する必要はない。
その他の『飲む育毛剤』に関しても、健康食品としてくくることはできるかもしれないが、発毛・育毛効果については、甚だ疑わしいといえる。

界面活性剤が入らないシャンプーがある?

「おたくのシャンプーには界面活性剤が入っていますか?」というご質問をたくさんいただく。
実は返答に困る質問なのであるが、この質問を受けない日は皆無といってもよい。
それというのも、「このシャンプーには界面活性剤は入っていません」などという、消費者を愚弄したようなうたい文句を使った商品が、出回っているせいである。
しかし、『界面活性剤』があたかも有害物質であるように宣伝するメーカーは悪質であるといってよい。『界面活性剤』と言うと馴染みの薄い響きがあるが、簡単にいってしまえば、決して混ざらないはずの『水と油を混ぜ合わせる作用のあるもの』という意味である。
身近な例をあげれば、大豆や卵黄に含まれるレシチンも、代表的な界面活性剤であり、小麦粉にバターや水などを加えて加工するパンや、チョコレート、ケーキなどの食品、ビタミン剤を含む医薬品も、ほとんどが界面活性剤の力を利用して製造されている。このように、私たちの周りは界面活性剤入りの食品、医薬品、工業用品であふれかえっている。私たちは、無意識にたくさんの界面活性剤に触れたり、摂取しているのである。界面活性剤は、決して有害物質という意味ではないのである。
もう一ついえば、界面とは、それぞれの物質の表面のことであり、広辞苑(岩波書店)によれば『二つの物質の境の面』とある。したがって、たとえば一般に水面と呼んでいるのが、水と空気の境目、つまり界面であり、卵の表面も空気との境目は界面である。このように、この世に存在するすべての物質には界面(表面)があり、界面のないものは、決して存在しないのである。
その中で、水の界面(表面)と油の界面(表面)の境をなくしてしまう作用を持つものを、界面活性剤と呼んでいるのである。シャンプー剤は、石鹸などの洗浄剤と同様に、油と水などを加工して作られる。したがって、界面活性剤を含まないパンやチョコレートが存在しないのと同様に、いかなる原料で作られたシャンプー剤であっても、「界面活性剤を含まない」シャンプー剤などは、絶対にあり得ないのである。
「このシャンプー剤は、すべて天然成分でできているので、界面活性剤が含まれていないから安心です」などというメーカーがあるとすれば、それはきわめて無責任で、非常識な発言と言える。

全成分表示は消費者保護になる?

ヘアケア製品を扱う弊社には、毎日たくさんのさまざまな質問が寄せられる。質問内容にも流行りすたりがあるが、みなさんがどのようなことに興味を持たれているのか、だいたいは把握することができる。
そうしたなかで最近とみに増えたのが、配合成分に関する質問である。二〇〇二年四月から、消費者保護の名のもとに、すべての化粧品類に全成分表示が義務付けられ、私たちが日常手にする化粧品に成分名が列挙されるようになったからである。
この制度は、一見、消費者保護につながる画期的な制度のように思われがちだが、消費者にとってなじみが薄く、しかもわかりにくい成分名が羅列されるだけの表示制度であるので、決して消費者保護にはならず、見当違いな制度と言える。
たとえば、成分表示では『塩』と『水』からなる塩水も、三%の塩水と五十%の塩水ではしょっぱさが全く違う。また、『赤』と『白』という単色を混ぜてつくる混合色も、配合の割合によって濃赤色、濃ピンク、薄ピンク、ピンクがかった白と全く違う色になる。これと同様に、成分のみを羅列しても、製品の判断材料としては用をなさない。
食品にたとえて言えば、大根は、「刺身のつま」、「大根おろし」、「おでん」、「きんぴら」、「サラダ」、「タクアン」、「浅漬け」などと、調理法次第で全く違う食べ物になるが、原料は『大根』という表示になるのだ。
調理に使用する酢もそうである。『食欲増進作用』と『防腐剤』というように、全く逆な効果を発揮する酢であるが、どちらの目的であろうと『酢』だというわけである。
化粧品成分も同様な考え方に基づいているが、同じ成分が製法次第で全く違った役割を果たすのであるから、成分名のみを表示してもなんの意味もない。
ところがこの全成分表示制度を悪用して、消費者の錯覚を誘う業者があとを絶たず、弊社へ「本当のところはどうなのか」といった問い合わせが集中する。 
全成分表示制度
現行法では、配合目的や、配合比率についての開示義務はない。製法、配合比率が違えば全然別な製品ができあがってしまうにも関わらず、各成分名を羅列するだけの現行法では、一ミリグラムも、一グラムも、同じレベルで表示され、表示上は全く同じ配合成分のように記載されるので、使用目的は同じでありながら、効果の全く異なる化粧品が大量に出回るという、とんでもない事態が発生するわけである。
つまり消費者にとっては、なじみの薄い配合成分のみが表示されているだけで、何の利益にもならないばかりか、混乱の元であるといってもよいだろう。
私たちはまず第一に、成分の羅列に惑わされない、賢い消費者にならなければならない。

表示指定成分は有害?

『表示指定成分は入っておりません』などと銘打った化粧品やヘアケア製品が増えていて、一部の消費者の間に『表示指定成分は危険であり、表示指定成分以外のものであれば、安全である』という間違った認識が定着しつつある。
厚生労働省によって表示が義務付けられている各種成分は、使用量を規制するものであって、必ずしも有害なものではない。
たとえていうなら、料理に使う醤油のようなものである。
醤油は、日本料理に欠かせない調味料であり、これに含まれるアミノ酸は、私たちの健康にとってなくてはならない栄養素である。しかしこの醤油は、戦後の一時期に、『猫いらず』というねずみ駆除用の毒薬の代わりに、自殺の手段として用いられたことがあった。調味料として使われている醤油であっても、大量に飲めば充分死にいたる。塩もまた然りである。
『表示指定成分』のほとんどは、化粧品などの品質を安定させるために含まれるものである。化粧品などの原材料となる『天然成分』は、どれも腐敗しやすく、たとえばコラーゲンに代表されるような動物性タンパク質は、常温で保管すると、およそ一週間で完全に腐敗し、強烈な悪臭を放つようになる。植物性タンパク質も同様で、野菜などを常温で保管した場合を考えてもらえば、容易に理解していただけると思う。
また、保存食品である米を炊飯したり、水に浸したまま放置すると腐敗するように、漢方生薬エキスなども、化粧品などに配合された瞬間から、やはり変質が始まる。
したがって、すべて天然成分で作られた化粧品類であるにしても、必ず防腐剤(保質成分)や品質安定剤などが配合されている。防腐剤や品質安定剤となる成分は無数にあって、その中には毒性の強い成分もたくさんあり、知らずに使い続けるうちに皮膚から吸収され、シミなどの思いがけない弊害を誘発させる場合もある。
その点、厚生労働省によって使用基準が定められている『表示指定成分』は、「大量に使用してはならない成分」ではあるが、使用基準を守っていれば、きわめて安全な成分なのである。
厚生労働省が毒性テストを済ませている成分は限られており、表示指定成分以外の、防腐剤、品質安定剤などの成分は、いわば使用限度基準がわからない成分であって、極端ないい方をすれば、安全性の保証がない成分であるともいえるのである。
『表示指定成分は入っていません』という化粧品が安全であると受け止めるのは短絡的な考え方であり、むしろ危険であると考えた方が賢明であろう。
『表示指定成分』は、決して危険な成分ではない。